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ボクシング

被弾を減らすヘッドムーブ完全ガイド|スリップ・ウィービング・ダッキングの練習法と実戦活用

2026.02.20
被弾を減らすヘッドムーブ完全ガイド|スリップ・ウィービング・ダッキングの練習法と実戦活用

ボクシングのヘッドムーブ(スリップ・ウィービング・ダッキング・プル)を体系的に解説。初心者が被弾率を下げるための段階的練習メニュー、よくあるミスの修正法、カウンター連携まで完全網羅。

【結論】ヘッドムーブは「避ける技術」ではなく「反撃のための位置取り」である
  1. ガードだけに頼ると被弾率は下がらない:ヘッドムーブを加えると被弾率を20〜40%削減できる
  2. 4つの技術を使い分ける:パンチの種類に応じてスリップ/ウィービング/ダッキング/プルを選択
  3. 避けた直後の0.3秒が勝負:ヘッドムーブの真の目的は「避けた後のカウンター」にある

ヘッドムーブとは、上体と下半身の連動によってパンチの軌道から頭部を外し、被弾を減らしながら反撃しやすい角度を作る防御技術です。

初心者はガード(ブロッキング)だけに頼りやすいですが、ガードだけでは衝撃を完全に吸収できず、ダメージが蓄積します。ヘッドムーブを組み合わせることでパンチをそもそも当てさせない防御が可能になり、同時に反撃のチャンスが生まれます。


ヘッドムーブの4つの基本技術

ヘッドムーブには大きく分けて4つの技術があります。それぞれ避けるパンチの種類が異なるため、使い分けが重要です。

技術対応パンチ動きカウンター難易度
スリップジャブ・ストレート頭を左右に外すストレート・フック★☆☆
ウィービングフックU字を描いて潜るボディフック★★☆
ダッキングフック・大振り膝を曲げ真下にしゃがむアッパー・ボディ★★☆
プルバックストレート・ジャブ上体を後ろに引くカウンターストレート★★★

技術1:スリップ(ジャブ・ストレート回避)

スリップはヘッドムーブの中で最も基本的かつ使用頻度が高い技術です。相手のジャブやストレートに対して、頭を左右に小さく外して避けます。

正しいスリップのやり方

  1. 基本の構え(オーソドックスの場合)から、肩の回旋を使って上体を斜めに傾ける
  2. 相手のジャブが右side(自分の左側)に飛んできたら、右肩を前に出すように上体を右に回旋
  3. 移動幅は拳1個分が目安。大きく避けすぎると次の動作が遅れる
  4. 避けた瞬間、相手の外側に位置しているため、ストレートやフックが当てやすくなる

スリップの3大ミスと修正法

ミス原因修正法
腰を折って前屈になる上体だけで避けようとしている膝と股関節を使い、軸を保ったまま回旋する
避けた後に視線が下がる恐怖心で顎を引きすぎている常に相手の胸元〜顎を見る。床を見たら負け
動きが大きすぎて体勢が崩れる全身で避けようとしている拳1個分の最小移動を徹底。おへそは動かさない意識

プロの活用例: フロイド・メイウェザーJr.は1R平均のスリップ成功率が約70%とされ、12R戦っても顔がほとんど腫れないのはこの技術の精度が極めて高いためです。


技術2:ウィービング(フック回避)

ウィービングは、相手のフックに対してU字を描くように頭を潜らせて避ける技術です。フックは横方向の軌道なので、スリップ(左右移動)では避けきれません。ウィービングでパンチの下を通ることで対応します。

正しいウィービングのやり方

  1. 相手のフックが来ると判断したら、膝を曲げて重心を落とす
  2. フックの軌道の下をくぐるようにU字を描いて頭を移動させる
  3. くぐった後、反対側に出ることで相手の死角に入る
  4. 出た瞬間にボディフックアッパーを返す

練習ツール:ロープウィービング

体育館やジムにロープ(またはゴムチューブ)を肩の高さに張り、その下を左右に潜る練習が最も効果的です。

  • 高さ: 自分の肩〜首の位置
  • 目安: 8往復×3セット(休憩45秒)
  • 注意: 背中を丸めず、膝で高さを調整する。ロープに当たったらフォームが崩れている証拠

技術3:ダッキング(フック・大振り回避)

ダッキングはウィービングと似ていますが、真下にしゃがむ動きです。U字を描かず、膝を曲げて素早くしゃがみ、パンチの軌道の下を通ります。

ウィービングとダッキングの違い

項目ウィービングダッキング
動きの軌道U字(横に移動して潜る)垂直(真下にしゃがむ)
対応パンチフック全般大振りのフック・オーバーハンド
反撃パターン横に出てからフックしゃがんだ位置からアッパー・ボディ
リスク移動距離が長いアッパーをもらう危険がある

ダッキングの注意点

  • しゃがみすぎるとアッパーの餌食になる。頭の位置は相手のベルトラインまでが限度
  • しゃがんだ後、素早く元の高さに戻る。しゃがんだまま固まらない
  • 真下に沈むため、足幅を事前にやや広めに取ると安定する

技術4:プルバック(ストレート回避・上級者向け)

プルバックは上体を後ろに引いてパンチの射程から外れる技術です。メイウェザーの代名詞でもあり、成功すれば相手のパンチが空を切った瞬間にカウンターを合わせられる有利な技術ですが、タイミングを間違えると次のパンチをもらうリスクがあります。

プルバックのポイント

  1. 後ろ足に体重を移す(前足は地面に残す)
  2. 上体を5〜10cm後ろに引くだけで十分。大きく引きすぎない
  3. 相手のパンチが空振りした瞬間に、前足を踏み込んでストレートを返す
  4. 後ろに体重が残りすぎると追撃をもらう。0.5秒以内に前に戻る意識

プルバックが難しい理由: ガードを下げた状態で後ろに引くため、読み間違えると完全にノーガードの状態でパンチを受ける。初心者はスリップとウィービングを先に習得してからチャレンジすること。


実戦で使うためのカウンター連携

ヘッドムーブの真価は**「避けた後に何をするか」にあります。避けるだけでは相手にプレッシャーを与えられず、何度も攻撃されます。避けた直後の0.3秒で反撃を出す**ことで、相手は「打つとカウンターが来る」と認識し、攻撃を躊躇するようになります。

パンチ別カウンターの組み合わせ

相手のパンチ回避技術カウンター例成功のコツ
ジャブ右スリップ右ストレートスリップの回旋をそのままストレートの推進力にする
右ストレート左スリップ左フック(顔面 or ボディ)相手の右腕の外側に出ることで有利な角度を確保
左フックウィービング右ボディフック → 左フックU字で潜った勢いをボディフックに変換
右フックダッキング左アッパーしゃがんだ位置から膝の伸展でアッパーを突き上げる
ジャブ(遠距離)プルバックワンツー(ジャブ→ストレート)空振りの直後に前に出る。相手の引き手が戻る前に打つ

レベル別練習ドリル

ドリル1:ミラースリップ(初心者・一人OK)

鏡の前で構え、相手のジャブをイメージしながら左右にスリップする。

  • 回数: 左右各15回×3セット(休憩30秒)
  • ポイント: 鏡で「おへそが動いていないか」を確認。軸がブレたらやり直し
  • 上達の目安: 15回連続でフォームが崩れなくなったら次のドリルへ

ドリル2:ロープウィービング(初心者〜中級者)

肩の高さに張ったロープの下を左右にU字で潜る。

  • 回数: 8往復×3セット(休憩45秒)
  • ポイント: 背中を丸めず、膝の屈伸で高さを調整する。ロープに体が触れたらフォーム修正
  • 応用: 慣れたら潜った後にワンツーを追加して攻撃連携も練習

ドリル3:ダッキング&アッパー(中級者)

パートナーにゆっくりフックを出してもらい、ダッキングで避けた直後にアッパーを返す。

  • 回数: 左右各10回×3セット(休憩60秒)
  • ポイント: しゃがみすぎない(相手のベルトラインまで)。素早く元の高さに戻る
  • 一人の場合: ダブルエンドバッグ(両端固定の小型バッグ)を使って、ボールが揺れてきたらダッキング

ドリル4:プル&ワンツー(中級者〜上級者)

パートナーにジャブを出してもらい、プルバックで避けた直後にワンツーを返す。

  • 回数: 10回×3セット(休憩60秒)
  • ポイント: プル後0.5秒以内に前に戻る。後ろに残り続けない
  • NG: ガードを完全に下げてプルしない。片手は必ずガードに残す

ドリル5:複合ディフェンスドリル(上級者)

パートナーが「ジャブ→ストレート→フック」のコンビネーションを出し、それぞれに対応するヘッドムーブで避けてからカウンターを返す。

  • 回数: 5コンビネーション×3セット
  • ポイント: 事前にコンビネーションのパターンを決めておく → 慣れたらランダムに変更

練習用ツールの選び方

一人練習に使えるツール

ツール用途価格目安おすすめ度
ダブルエンドバッグスリップ・ダッキングの反射練習3,000〜8,000円★★★
ゴムチューブ/ロープウィービング練習500〜1,500円★★★
フォームチェック★★★
リフレックスバッグ(棒バネ式)動く的への反応練習5,000〜15,000円★★☆
スマホ三脚動画撮影 → AI分析1,500〜3,000円★★★

時間別実践プラン

15分プラン(忙しい日のミニマム練習)

  1. ウォーミングアップ: 軽いシャドー 2分
  2. ミラースリップ: 15回×2セット(5分)
  3. プルバック練習: 10回×2セット(5分)
  4. ストレッチ: 3分

30分プラン(標準練習)

  1. ウォーミングアップ: シャドー 3分
  2. ミラースリップ: 15回×3セット(6分)
  3. ロープウィービング: 8往復×3セット(8分)
  4. プル&ワンツー: 10回×3セット(6分)
  5. 複合ドリル(ジャブ→スリップ→ワンツーの反復): 3分
  6. クールダウン・ストレッチ: 4分

60分プラン(本格練習)

  1. ウォーミングアップ: シャドー 5分
  2. ミラースリップ: 15回×3セット(6分)
  3. ロープウィービング: 8往復×3セット(8分)
  4. ダッキング&アッパー: 10回×3セット(6分)
  5. プル&ワンツー: 10回×3セット(6分)
  6. 複合ディフェンスドリル: 5コンビネーション×3セット(10分)
  7. マススパーリング: 2R × 3分(8分、軽強度で実戦感覚を養う)
  8. 動画確認 + AI分析: 撮影した自分のフォームを確認(6分)
  9. クールダウン: 5分

AI分析の活用: AIスポーツトレーナーアプリで自分のスパーリング映像を分析すると、「頭部移動量」「ガード位置」「避けた後の姿勢」を数値化して確認できます。「避けたつもりが避けきれていない」「避けた後に姿勢が崩れている」といった自分では気づきにくい課題を客観的に把握し、ピンポイントで改善できます。


上達の目安:段階的ロードマップ

期間習得目標到達レベル
1〜2週間スリップのフォーム固定。シャドーで15連続ミスなしジャブを意識的に避けられる
3〜4週間ウィービング・ダッキングの基本。ロープを8往復ノーミスフックにも反応できる
5〜8週間カウンター接続。避けた後0.5秒以内にパンチが出るマススパーで意識的にヘッドムーブが使える
3ヶ月以降複合ディフェンス+プルバック。ランダムな攻撃に対応無意識にヘッドムーブが出る(反射レベル)

FAQ:ヘッドムーブに関するよくある質問

Q
初心者はどの技術から始めるべきですか?
スリップからです。最もシンプルで安全性が高く、使用頻度も高い技術です。スリップが安定してからウィービング→ダッキング→プルバックの順に習得するのが最も効率的です。いきなり全技術を練習しようとすると、どれも中途半端になります。
Q
ヘッドムーブの練習で疲れてしまいます
動きが大きすぎる可能性が高いです。ヘッドムーブは拳1個分ずれれば十分です。大きく動くと①体力を消耗する②体勢が崩れて次のパンチに対応できない③カウンターが遅れる、と三重苦になります。「最小の動きで最大の効果」を意識してください。
Q
スパーリングになるとヘッドムーブが全く使えません
反復不足か、練習とスパーの速度差が大きすぎることが原因です。①まずはミット打ちの中で「避けて返す」パターンを固定②マススパー(5割以下の力)で実戦感覚を養う③徐々にスピードを上げる、という段階を踏んでください。いきなりガチスパーで使おうとしても失敗します。
Q
首が痛くなるのですが、フォームの問題ですか?
首の筋肉だけで避けようとしているのが原因です。正しいヘッドムーブは膝・股関節・肩の回旋で行い、首はほとんど使いません。首が痛む場合は、①膝をもっと使う②肩の回旋幅を小さくする③練習後に首のストレッチを入れる、を試してください。
Q
一人でもヘッドムーブは上達できますか?
十分可能です。ミラースリップ(鏡の前でスリップ)、ロープウィービング(紐の下を潜る)、ダブルエンドバッグ(揺れるボールに反応)の3つがあれば一人でも上達できます。さらに、スマホで自分を撮影してフォームを確認すると、客観的に問題点が見えて改善スピードが上がります。
Q
ウィービングとダッキングの使い分けがわかりません
ウィービングは「潜って横に抜ける」動きで、避けたあと相手の側面に出られます。ダッキングは「真下にしゃがむ」動きで、その場で低い位置からアッパーやボディを狙います。フックが来たら距離を変えたい場合はウィービング、距離を変えずに反撃したい場合はダッキング、と使い分けるのが基本です。

まとめ:ヘッドムーブ上達の4つの鉄則

  1. スリップから始める。最もシンプルで効果が高い。2週間で基本フォームを固めよう
  2. 拳1個分の最小移動。大きく避けるのは体力の無駄遣い。動きは小さいほど速い
  3. 避けたら必ず1発返す。ヘッドムーブはカウンターとセットで初めて意味がある
  4. 動画で客観的に確認。自分の「できているつもり」と実際の動きにはギャップがある

ヘッドムーブは、1日で身につく技術ではありません。しかし、毎日10分のミラースリップを2週間続けるだけで、スパーリングでの被弾感覚が明らかに変わります。

📅 最終更新: 2026年2月 | 記事の内容は定期的に見直しています

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