「ボールを投げるのが怖い」「近距離の送球が暴投になる」。それはイップスかもしれません。技術的な原因と心理的な原因の両面からアプローチし、段階的にスローイングを修正する3つのステップを解説します。
この記事は「野球スローイング完全ガイド」の一部です
イップスは決して「不治の病」ではありません。正しい手順でリハビリを行えば、以前よりも良いフォームで投げられるようになります。
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📌 この記事の結論
イップスの最大の原因は「暴投への恐怖心」による筋肉の硬直です。克服への近道は、投げる動作を分解し、「相手に届かせる」という目的を一時的に捨てること。まずはネットスローで指先の感覚を取り戻し、自信を積み重ねることから始めましょう。
イップスとは何か?定義とメカニズム
イップスの正体
イップスとは、精神的なプレッシャーや過去の失敗体験が引き金となり、筋肉が一時的に硬直・痙攣し、思い通りの動作ができなくなる運動障害である。
特に野球の送球において多く見られ、「長い距離は投げられるのに、塁間の短い距離が投げられない」「キャッチボールで相手の足元に叩きつけてしまう」といった症状が特徴です。
技術的な原因とメンタル的な原因
イップスは「メンタルが弱いからなる」と誤解されがちですが、技術的なエラーがきっかけになることも多くあります。
- 技術的要因: リリースポイントのズレ、手首の使いすぎ(こねる動作)、肘が下がるフォーム
- メンタル要因: 「また暴投するかも」という予期不安、監督やチームメイトの視線
この2つが負のループ(技術ミス→不安→さらに筋肉硬直→ミス)を生み出します。断ち切るには、どちらか一方ではなく両面からのアプローチが必要です。
1. 克服ステップ1:指先の感覚を取り戻す
まずは「相手に投げる」ことをやめ、「自分の指先の感覚」に集中します。
仰向けスナップスロー
目的: 重力を使わずに、手首と指先だけの純粋なリリース感覚を養う。
手順:
- 地面に仰向けに寝転がる。
- 肘を肩のラインに合わせて床につける。
- 手首のスナップだけでボールを真上に投げる。
- 落ちてきたボールをそのまま捕球する。
メニュー目安:
- 回数: 30球 × 3セット
- ポイント: ボールに綺麗なバックスピンをかけ、同じ位置に落ちてくるようにする。
ネットスロー(至近距離)
目的: 「暴投」という概念がない環境で、腕を振る恐怖を消す。
手順:
- ネットから2〜3メートルの距離に立つ。
- 全力ではなく、5〜6割の力でネットに向かって投げる。
- 狙う場所を一点に絞らず、「ネットのあの辺り」と漠然と投げる。
メニュー目安:
- 回数: 50球 × 2セット
- 注意点: フォーム(特に肘の高さ)だけを意識する。
2. 克服ステップ2:フォームの再構築
イップスの選手は、無意識に「置きにいく(手先でコントロールしようとする)」投げ方になっています。これを「体を使って投げる」フォームに戻します。
肘上げ体操(トップの確認)
目的: 肘が下がる(アーム投げ)のを防ぎ、正しいトップの位置を体に覚えさせる。
手順:
- ボールを持ち、トップの位置(頭の後ろ)にセットする。
- 反対の手で投げる側の肘を軽く支える。
- その状態から、肘を支点にして前腕だけを振る動作を繰り返す。
遠投(山なりボール)
目的: 腕を大きく振る感覚を取り戻す。
イップスは短い距離で発症しやすいです。逆に遠い距離で、大きく山なりのボールを投げる時は、手先でのコントロールができないため、自然と体全体を使った投げ方になります。
メニュー目安:
- 距離: 40〜50メートル
- 軌道: フライを上げるような高い軌道
- 意識: 相手の胸ではなく、「相手の上空」を目がけて投げる。
スローイングフォームのGood/Bad比較
| チェック項目 | ❌ イップスになりがちな動作 (Bad) | ✅ 改善されたフォーム (Good) |
|---|---|---|
| リリースの瞬間 | 手首をこねて、押し出すように投げている | 指先でボールを「切る」感覚で弾いている |
| 肘の高さ | 肩より下がっている(恐怖で縮こまる) | 両肩を結んだラインより上がっている |
| 視線 | 相手の足元や地面を見てしまう | 相手の帽子や胸元をしっかり見ている |
3. 克服ステップ3:実戦復帰へのメンタル調整
ネットスローや遠投ができるようになったら、いよいよ相手とのキャッチボールです。ここで焦らないことが重要です。
「ワンバウンドOK」ルール
キャッチボールの相手に事前に伝えておきます。「今日は全部ワンバウンドで投げるから」と宣言してください。 「相手の胸に投げなければならない」というプレッシャーを消すことが目的です。
距離を変えるドリル
同じ距離で投げ続けると、距離感が固定されて怖くなることがあります。 1球ごとに一歩下がる、あるいは一歩近づくなどして、常に目測を変えながら投げます。脳に「距離の固定観念」を作らせないための工夫です。
4. 【症状別】イップス克服実践プラン
⏱️ 軽度(たまに暴投する)
- 毎日のルーティン: 仰向けスナップスロー 30球
- 練習: キャッチボール前の遠投を多めに行う
- 意識: 7割の力でフォーム重視
⏱️ 中度(短い距離が怖い)
- 毎日のルーティン: ネットスロー 50球
- 練習: キャッチボールはワンバウンドから開始
- 禁止事項: 無理に速い球を投げない
⏱️ 重度(ボールが手から離れない)
- 毎日のルーティン: シャドーピッチング(タオルのみ)
- 練習: テニスボールやスポンジボールを使用する
- アプローチ: 野球以外のボール遊び(ドッジボール投げなど)で「投げる」感覚をリセットする
自分の「投げ方」を客観視しよう
イップスの選手は、自分がどう投げているか分からなくなっていることが多いです。「肘が下がっているよ」と言われても、自分では上げているつもりだったりします。
AIフォーム分析アプリを使えば、自分の投球フォームを撮影するだけで、肘の角度やリリースの位置を客観的な数値で見ることができます。 「感覚」と「現実」のズレを修正することが、イップス克服の第一歩です。
よくある質問(FAQ)
まとめ:イップスは「進化の過程」である
イップスになる選手は、真面目で、誰よりも野球に向き合ってきた選手が多いです。 これを乗り越えた時、あなたは以前よりも技術的にも精神的にも強い選手になれます。 一人で悩まず、AIや正しい理論を頼りながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
📅 最終更新: 2026年2月 | 記事の内容は定期的に見直しています




